秋になると食べたくなる、脂ののったサンマ。香ばしく焼けた身と、ほどよい苦みのあるわたまで、毎年楽しみにしている方もいるのではないでしょうか。
ところで、「脂がのっている」と聞くと、コレステロールや中性脂肪が気になる方は、少し心配になるかもしれません。それでもサンマが健康面で注目されるのは、なぜなのでしょう。
その理由のひとつが、サンマの脂に含まれるDHAとEPAです。今回は旬のサンマを入口に、DHA・EPAの特徴や魚の脂の考え方、毎日の食生活への取り入れ方を、みずき薬局四街道店の薬剤師監修のもと、わかりやすくご紹介します。す。
秋の味覚サンマの脂は多い?栄養成分を数字で見てみよう

秋に旬を迎えるサンマは、たんぱく質や脂質のほか、ビタミンD、ビタミンB12なども含む魚です。
文部科学省の食品成分データベースによると、焼いたサンマの可食部100g当たりに含まれる主な成分は、次のようになっています。
焼いたサンマ100g当たりの主な成分
エネルギー:281kcal
たんぱく質:23.3g
脂質:22.8g
n-3系多価不飽和脂肪酸:4.95g
EPA:1.3g
DHA:2.0g
ビタミンD:13.0μg
ビタミンB12:16.0μg
※数値は可食部100g当たりの目安です。サンマの大きさや脂ののり方などによって、実際の含有量は異なります。また、成分表の「焼き」は、調味料を加えずに焼いた場合の数値です。
こうして数字で見てみると、サンマはたんぱく質だけでなく、脂質もしっかり含む魚だと分かります。
「それなら、脂質の摂りすぎが気になる人は、サンマを控えた方がよいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、脂質はすべて同じものではありません。脂質を構成する脂肪酸にはいくつかの種類があり、サンマの脂にはDHAやEPAなどのn-3系脂肪酸が含まれています。
DHA・EPAはどちらもn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の仲間
脂肪酸は、その構造によって飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。さらに、不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。
DHAとEPAは、どちらも「n-3系多価不飽和脂肪酸」、いわゆるオメガ3脂肪酸の仲間です。
n-3系脂肪酸には、植物油などに含まれるα-リノレン酸もあります。α-リノレン酸の一部は体内でEPAに変換され、さらにDHAへ変換されますが、その量には限りがあります。そのため、DHA・EPAを含む魚も、日々の食事に取り入れることが大切です。
ここで注意したいのは、「DHA・EPAだけをたくさん摂ればよい」というわけではないことです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、n-3系脂肪酸全体について年齢や性別ごとの目安量が示されていますが、DHA・EPAだけを対象にした一律の推奨量は設けられていません。
一つの成分だけを追いかけるのではなく、魚を含めた食事全体の中で考えることが基本です。
DHAとEPAは何が違う?

DHAは「ドコサヘキサエン酸」、EPAは「エイコサペンタエン酸」の略です。
どちらも魚の脂に含まれるn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)の仲間ですが、体内での働きにはそれぞれ特徴があります。
DHAは、脳や目の網膜などに多く存在し、細胞膜を構成する成分のひとつです。脳や神経の働きとの関係についても研究されています。ただし、DHAを摂取すれば記憶力や集中力が高まると単純に考えることはできません。
一方、EPAは、血液中の中性脂肪との関係で注目されている脂肪酸です。中性脂肪を減らす働きが研究されており、医療の分野でも利用されています。
もっとも、DHAにも中性脂肪との関係があり、両者の働きを明確に分けられるわけではありません。
DHA・EPAは、一般に「血液サラサラ」を意識した成分として知られています。ただし、「血液サラサラ」は医学的な正式用語ではなく、血液そのものが薄くなるという意味でもありません。
DHA・EPAを含む魚を食べることで、中性脂肪などの検査値が必ず改善するわけではありません。検査値には、食事だけでなく、体質や運動、飲酒など、さまざまな要因が関係しています。
DHA・EPAは体の中でそれぞれの役割を持つ脂肪酸ですが、特定の食品だけに健康効果を期待せず、毎日の食事全体の中で取り入れることが大切です。
魚の脂と肉の脂は何が違う?
脂質という言葉だけを聞くと、「なるべく摂らない方がよいもの」と思ってしまうかもしれません。
しかし、脂質は体を動かすためのエネルギー源になるほか、細胞膜やホルモンなどの材料にもなる大切な栄養素です。気をつけたいのは、必要以上に摂ることや、特定の種類の脂肪酸に偏ることです。
肉の脂身、バター、生クリームなどには、飽和脂肪酸が多く含まれます。
一方、サンマ、サバ、イワシなどの魚には、DHA・EPAを含むn-3系多価不飽和脂肪酸が含まれています。
もちろん、魚の脂ならどれだけ摂ってもよいわけではありません。サンマにも飽和脂肪酸は含まれていますし、脂質にはエネルギーがあります。
「肉の脂は悪い、魚の脂は良い」と単純に分けるのではなく、肉料理が続いたら魚を選ぶ日をつくるなど、食生活全体のバランスを整えることが大切です。
コレステロールと中性脂肪は分けて考えよう
健康診断でよく目にする「コレステロール」と「中性脂肪」。どちらも血液中の脂質ですが、実はそれぞれ役割が異なります。
血液中の脂質には、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪などがあり、数値が高くなる原因や、食生活で見直したい点も同じではありません。
LDLコレステロールが高い場合は、肉の脂身、バター、生クリームなどに多く含まれる飽和脂肪酸の摂りすぎに注意します。
一方、中性脂肪が高い場合は、食べすぎや飲酒、甘い飲み物、糖質の摂りすぎなども見直したいポイントです。DHA・EPAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸は、主に中性脂肪との関係で注目されています。
そのため、「DHA・EPAはコレステロールを下げる成分」と一言でまとめてしまうと、少し正確さに欠けます。
サンマを食べるかどうかだけで考えるのではなく、自分はどの検査値が気になっているのか、普段どのような食生活をしているのかを振り返ってみましょう。
DHA・EPAを含む魚を食生活に取り入れるには
DHA・EPAはサンマだけに含まれているわけではありません。サバ、イワシ、ブリ、鮭など、さまざまな魚から摂ることができます。
毎日同じ魚を食べ続ける必要はありません。その季節に手に入りやすい魚や、家族が食べやすい魚を選びながら、肉料理に偏りすぎないようにするのも一つの方法です。
焼いたサンマにもDHA・EPAは含まれています。「生で食べなければ意味がない」「決まった調理法でなければならない」と難しく考える必要はありません。塩焼きや煮物にしたり、缶詰を活用したりと、取り入れやすい方法を選びましょう。
缶詰や味付けされた魚を利用する場合は、商品によって食塩や糖分の量が異なります。栄養成分表示も確認しながら、ほかのおかずとの組み合わせを考えてみてください。
サンマだけで完結させず、献立全体で考えよう
脂ののったサンマは、それだけでも食べ応えがあります。
塩焼きにするなら、野菜や海藻、きのこなどを使った副菜を添えると、魚だけでは摂りにくい食物繊維なども補えます。しょうゆをかける場合は、かけすぎないようにするなど、塩分にも少し気を配りたいところです。
「健康によいといわれる食品を足す」ことだけでなく、「普段、摂りすぎているものはないか」と振り返ることも大切です。
とはいえ、食事は毎日続くものです。数字ばかりを気にして、季節の味覚を楽しめなくなってしまうのも少し寂しいものです。
サンマの脂を必要以上に気にすることなく、野菜などのおかずと組み合わせながら、秋の味覚を楽しみましょう。
食事や健診結果で気になることは薬剤師へ
「コレステロールが気になるけれど、魚の脂も控えた方がよい?」「健診結果を見ても、食事の何を見直せばよいのか分からない」と感じることはありませんか。
検査値について考えるときは、一つの食品だけでなく、普段の食事や生活習慣を振り返ることが大切です。また、医師や管理栄養士から食事について個別の指示を受けている方は、その内容を優先してください。
みずき薬局四街道店をはじめ、健栄の薬局では、お薬のことはもちろん、日々の健康管理についてもご相談いただけます。
「魚を食べるなら、肉料理とのバランスはどう考えたらよい?」「自分が気をつけるべきなのはコレステロール?それとも中性脂肪?」など、ちょっとした疑問でも構いません。
検査値や普段の食生活についてお話を伺いながら、無理なく取り組めることを一緒に考えていきます。
この記事を監修した薬局




<参考文献>
食品成分データベース 魚介類/さんま/皮つき/焼き(文部科学省)
DHA・EPA協議会 Q&A(一般財団法人 日本水産油脂協会内)
みずき薬局 四街道店
薬剤師