2026年1月現在、溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌)は一部地域で報告数の増減を繰り返す動向です。本記事では、国立健康危機管理研究機構や自治体の感染症発生動向、最新の流行状況、症状の特徴、他の病気との違い、2023年の流行と今年の違い、対策などについて解説します。
溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌)とは
溶連菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる感染症で、主に小児に多くみられます。飛沫感染や接触感染で広がり、学校や保育施設など集団生活の場で流行しやすいのが特徴です。
感染後2〜5日程度の潜伏期間を経て発症し、適切な抗菌薬治療を行えば、通常は1週間前後で回復します。
主な症状と注意すべきポイント
自治体が公表している感染症週報によると、溶連菌感染症では以下のような症状が報告されています。
・発熱
・のどの強い痛み
・頭痛、腹痛、吐き気
・舌が赤く腫れる「いちご舌」
・体や手足に細かい発疹(猩紅熱へ移行するケース)
適切な治療を受けた場合、感染性は24時間程度で大きく低下するとされており、早期受診が重要です。
A群溶血性レンサ球菌感染症は他の感染症とどう違う?症状の特徴と薬の飲み方の注意点
A群溶血性レンサ球菌感染症(いわゆる溶連菌感染症)は、インフルエンザや一般的な風邪と比べて症状の出方に明確な特徴がある感染症です。
最大の違いは、「全身症状よりも、のどの症状が極端に強く出やすい」という点にあります。
インフルエンザでは高熱に加えて強い倦怠感や筋肉痛が前面に出るのに対し、溶連菌では38℃前後の発熱とともに、刺すようなのどの痛み、赤く腫れた扁桃、白い膿(白苔)などが目立ち、飲み込む動作そのものが苦痛になるケースが少なくありません。
また、子どもを中心に舌がいちごのように赤くなる(いちご舌)、細かい発疹が出るといった症状が見られることもあります。
治療の大きな特徴として、溶連菌感染症はウイルスではなく細菌感染症であるため、抗菌薬(抗生物質)による治療が基本となります。この点は、対症療法が中心となるインフルエンザや一般的なウイルス性咽頭炎との大きな違いです。
一方で、のどの痛みが強いために「薬が飲みにくい」「飲むのがつらい」という悩みが出やすいのも、この感染症の特徴と言えます。
実際の対策としては、抗菌薬は自己判断で中断せず、処方された日数を必ず飲み切ることが最重要です。
そのうえで、どうしても服用がつらい場合には、医療現場でもよく案内されている工夫として、少量のチョコレートアイスやバニラアイスに包んで飲む、服薬補助ゼリーを使うといった方法があります。
これらは苦味を感じにくくし、のどを冷やす効果もあるため、痛みが強い時期には実用的ですが、薬の種類によっては、かえって苦みを増してしまい、飲みにくくなってしまうこともあるので、薬剤師に相談してください。
また、抗菌薬を高温の飲食物に混ぜたり、長時間放置したりすることは避け、必ず医師や薬剤師の指示に従うことが前提となります。
溶連菌感染症は、症状が軽くなっても治療を途中でやめてしまうと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症につながる可能性があることが、公的機関からも注意喚起されています。
そのため、「のどが痛い感染症」という軽い印象で判断せず、診断を受けた場合は最後まで治療を完遂することが、最も重要な対策となります。
重症化・合併症への注意
多くは軽快する一方で、まれに劇症型溶血性レンサ球菌感染症へ進行するケースも報告されています。急激な症状悪化や強い全身症状が出た場合には、速やかな医療機関受診が必要です。自治体の感染症週報でも、早期対応の重要性が繰り返し注意喚起されています。
溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)の流行時期トレンド(2025年秋〜2026年1月)
厚生労働省および国立健康危機管理研究機構(JIHS)が公表する感染症発生動向調査(IDWR)によると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、第49週以降定点当たりの報告数が増加し、第52週時点で、過去5年間の同時期平均値と比べて「やや多い」状況とされています。
例年、溶連菌感染症は夏〜初秋に一度増加した後、秋から冬にかけて再び流行が拡大する傾向がありますが、2025年後半はこの秋冬型の増加が明確に確認されました。
2025年10月以降、全国の小児科定点における定点当たり報告数は上昇基調に転じ、11月〜12月にかけて多くの地域で高水準を維持しています。
特に、都市部およびその周辺地域(関東・中部・近畿の一部)では、報告数が全国平均を上回る週が継続しており、学校や保育施設を中心とした集団感染の発生が背景にあると考えられます。
2025年12月〜2026年1月(第52週時点)の最新データでも、明確な減少傾向はまだ見られておらず、高止まり〜緩やかな増加を示す地域が混在しています。
この推移は、溶連菌感染症がインフルエンザ流行期と重なって冬季まで持続しやすい感染症であるという、過去データと一致する動きです。
公的機関は、冬季にかけても流行が継続する可能性があるとして、手洗いや咳エチケット、発症時の早期受診を引き続き呼びかけています。
なぜ2023年は溶連菌感染症が異常に増えたのか― 2025年と比較して読み解く流行規模の違い ―
東京都感染症情報センターおよび国立感染症発生動向調査(IDWR)の公開データを見ると、2023年後半(特に秋〜冬)にA群溶血性レンサ球菌咽頭炎が例年を大きく上回る水準で流行したことが確認できます。この急増は東京都に限った現象ではなく、全国的に同様の傾向が見られたことが公的データから明らかになっています。
2023年の流行が突出していた最大の背景として、公的機関は新型コロナウイルス感染症対策の緩和後に、子どもを中心とした集団生活が一斉に再開された影響を挙げています。
2020〜2022年にかけて感染機会が大幅に減少していた世代では、溶連菌に対する免疫獲得が進んでおらず、感受性の高い集団が一気に増えた状態で2023年を迎えたことが、流行規模拡大の要因と考えられています。
実際に、2023年秋以降は小児科定点における報告数が急増し、過去10年間と比較しても高水準が長期間持続しました。この点については、東京都のみならず、複数の自治体週報および全国集計データでも同様の傾向が確認されています。
一方、2025年の流行は2023年ほどの爆発的増加には至っていません。これは、2023年の大規模流行を経て、一定程度の免疫が集団内に形成されたこと、また医療機関・学校現場において早期受診や感染対策が定着したことが背景にあると、公的データの推移から読み取れます。
2025年後半〜2026年1月にかけても溶連菌感染症は流行していますが、その増加カーブは2023年のような急峻な立ち上がりではなく、例年の秋冬型流行の範囲内に収まっているのが特徴です。
このことから、2023年は「一時的に例外的な大流行」、2025年は「過去の流行を踏まえた平年並み〜やや多めの推移」と位置づけるのが、公的機関データに即した評価と言えます。
溶連菌感染症の対策と注意点(まとめ)
溶連菌感染症の予防において、特別な対策よりも基本的な感染対策の徹底が最も重要とされています。具体的には、手洗いの励行、咳エチケット、タオルや食器の共用を避けることが有効です。
また、発熱やのどの痛みが強い場合には、自己判断で様子を見続けず、早めに医療機関へ相談することが推奨されています。治療開始が遅れると、周囲への感染拡大や合併症のリスクが高まるため注意が必要です。
溶連菌感染症は、毎年冬から春にかけて一定数の報告が続く感染症です。流行規模が大きく見えない時期であっても、正確な情報を基に冷静な対応を心がけることが、感染拡大を防ぐ鍵となります。
<外部サイト参照リスト>
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行状況 (東京都感染症情報センター)
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/group-a/group-a/
感染症発生動向調査週報 (JIHS 国立健康危機管理研究機構)
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/index.html
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