「最近、飲む薬の数が増えて把握しきれない」「薬を飲んでいるのに、かえって体調が優れない気がする」……。そんな不安を感じたことはありませんか?
日本では高齢化に伴い、複数の持病を持つ方が増えています。それに比例して処方される薬の数も多くなりがちですが、実は薬が一定数を超えると、思わぬ体調不良を招くリスクが高まることがわかっています。
今回は、現代の医療課題のひとつである「ポリファーマシー」について、みずき薬局市原店の薬剤師西嶋が薬剤師の視点からそのリスクと対策をお伝えします。
高齢者の4人に1人は5種以上の薬を服用

現在、日本の高齢者医療において「多剤服用」は非常に身近な問題です。
厚生労働省が公表している「令和4(2022)年社会医療診療行為別統計の概況」によると、65歳以上の高齢者のうち、5種類以上の薬を服用している人の割合は26.9%。75歳以上では40.1%に昇ります。つまり、高齢者の4人に1人以上は、5種類以上の薬を常用しているのが現状です。
令和4(2022)年社会医療診療行為別統計の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa22/dl/gaikyou2022.pdf)
29P参考
ポリファーマシーに関する研究材料(CURONお薬サポート日本製薬工業協会)
https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/proper_use/lofurc0000003wdk-att/kaiin.pdf
2P参考
なぜ、これほどまでに薬の数が増えてしまうのでしょうか。大きな要因の一つに「受診科の分散」があります。
「血圧は循環器内科」「膝の痛みは整形外科」「眠れないから心療内科」といったように、それぞれの専門医を受診することで、各医師が最善と考えて出した薬が積み重なっていくのです。
また、加齢に伴い複数の慢性疾患を抱えやすくなることも要因です。さらに高齢になると、肝臓や腎臓の働きが低下し、薬を分解・排泄する力が弱くなることがあります。そのため、若い頃と同じ量の薬でも効きすぎたり、副作用が出やすくなったりする場合があります。
しかし、本来健康を守るための薬が、数が増えることで逆に体を蝕んでしまうケースがあることを、私たちはもっと知っておく必要があります。
5~6種服用は要注意!ポリファーマシーとは

「ポリファーマシー(Polypharmacy)」とは、多くの薬を服用することで副作用のリスクが高まったり、正しく服用できなくなったりするなど、薬物療法に支障が生じている状態を指します。
日本製薬工業協会の資料によると、入院患者では薬の種類が6種類以上、外来患者の場合は5種類以上で、この「ポリファーマシー」のリスクが高まることが示されています。
ポリファーマシーが引き起こす主なリスクには、以下のようなものがあります。
●副作用の相乗効果
薬同士が影響し合うことで、副作用が強く出たり、思わぬ体調不良が起こったりすることがあります。
●飲み間違い、飲み忘れ
種類が増えるほど管理が複雑になり、服薬アドヒアランス(患者が主体的に正しく薬を飲むこと)が低下し、飲み忘れや見間違いが起こりやすくなります。
●処方カスケード
薬の副作用による症状が「新しい病気」と勘違いされ、その症状を抑えるために別の薬が追加されてしまうことがあります。このように薬が次々と増えていく状態を「処方カスケード」といいます。
「年だから足腰が弱くなった」「物忘れが増えた」と思っていた症状が、実は薬の飲みすぎによる副作用だった、というケースは決して少なくありません。
ポリファーマシーを防ぐためにできること

ポリファーマシーは、決して「医師や薬剤師が悪い」「患者さんが悪い」という問題ではありません。医療の細分化が生んだ構造的な課題でもあります。
だからこそ、患者さん自身も薬の管理に関心を持ち、積極的にアクションを起こすことが、安全な薬物療法への第一歩となります。
1. お薬手帳を「1冊」に集約する
複数の医療機関にかかっている場合でも、お薬手帳は1冊にまとめましょう。別々の手帳を使っていると、医師や薬剤師が「全体の処方内容」を把握できず、成分の重複や飲み合わせのチェックが難しくなることがあります。
患者様の同意のもと、マイナ保険証(マイナンバーカード)を提示することで、医師や薬剤師が過去3年分の処方情報を正確に把握でき、薬の重複や相互作用を自動的にチェックすることが出来ます。
どうまとめていいかわからない…という場合は、薬剤師にご相談ください。
2. かかりつけ薬剤師・薬局を持つ
「どの病院の処方箋も、まずはこの薬局に持っていく」という かかりつけ薬局を決めておくこともおすすめです。あなたの服薬履歴を継続的に把握している薬剤師がいれば、薬の数が増えすぎた際に「この薬とこの薬は成分が似ていますが、先生に確認しましょうか?」といった提案が可能になります。
3. 体調の変化をメモしておく
新しい薬が始まってから「ふらつく」「胃がもたれる」「ぼーっとする」などの症状が出た場合は、遠慮なく薬剤師にご相談ください。特に高齢の方は、薬を分解、排泄する能力が若年者より低いため、標準的な量でも効きすぎてしまうことがあります。
体調の変化をメモしておくと、受診時や薬局での相談時に役立ちます。
4. 勝手に薬をやめない
「薬が多いから」といって、自己判断で服用を中止するのは非常に危険です。症状が急激に悪化するおそれがあります。減らしたい、あるいはまとめたいという希望があるときは、必ず医師や薬剤師に相談し、医学的な判断のもとで調整を行ってください。
服薬の不安があれば、いつでも薬剤師にご相談ください
「ポリファーマシー」を初めて知って、心配になった方もいるかもしれません。
ですが、薬の数が多いこと自体が必ずしも悪いわけではありません。治療に必要な薬を適切に服用している場合もありますし、ポリファーマシーは予防することも可能です。
大切なのは、自己判断で薬を減らしたり中止したりするのではなく、「今の薬は本当に必要か」「飲み合わせに問題はないか」「体調の変化が薬と関係していないか」を、医師や薬剤師と一緒に確認していくことです。
「薬の種類が多くて副作用が心配」「薬を飲みはじめてから体調に変化があった」など、不安があれば、お薬手帳をお持ちのうえ、お近くの健栄の薬局へお気軽にご相談ください。
薬剤師は、薬の専門家。服用中の薬の飲み合わせや副作用の確認、体調の変化などをお伺いしながら安心して治療を続けられるようサポートいたします。
みずき薬局 市原店
薬剤師
西嶋