「最近、歩くときに少し足元がふらつくようになった」「外出で長く歩くのがちょっと不安……」
そんな方は、「杖(つえ)」の使用を検討してみてもよいかもしれません。
杖は、歩行をしっかりと支えてくれる心強い味方です。
今回は、健栄の薬局 ファーマシーきみさらずの薬剤師 竹田が、杖の選び方や種類、使用時の注意点、そして意外と知られていない「薬局で相談できること」について解説します。
歩くのが不安になったら「杖(つえ)」の使用検討をしてみましょう

「杖は、足腰が弱った人が使うもの」と思っていませんか。
実は、足腰が弱り切ってからではなく、「少し歩行に不安を感じる」「長い距離を歩くと疲れる」といった段階で、杖が必要かどうかを考えることも大切です。
杖には、単に体を支えるだけでなく、次のような多くのメリットがあります。
・転倒のリスクを軽減する(体のバランスを保ちやすくなる)
・足や腰への負担を減らす(痛みをやわらげる)
・歩行の推進力をサポートする(疲れにくくなり、歩行距離が伸びる)
・外出への自信がつく(精神的な安心感が得られる)
厚生労働省の国民生活基礎調査などでも、高齢者が介護を必要とするようになった主な原因として「転倒・骨折」が上位に挙げられています。年齢を重ねるごとに、お体の筋力やバランスを保つ力は少しずつ変化します。自分では気づかないうちに、歩幅が小さくなったり、つまずきやすくなったりしていることもあります。早めにサポートを取り入れることで、日々の安心した暮らしを守ることにつながります。
また、「自分の足で歩くこと」は、日常生活の中で身体を動かす機会を保つことにもつながります。無理なく歩ける環境を整え、できるだけ自分らしい生活を続けるための一つの方法として、杖の活用を考えてみましょう。
杖の種類と特徴

ひとくちに杖といっても、その形状や機能はさまざま。
体の状態や使用する目的に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
ここでは、代表的な3つの種類をご紹介します。
杖の種類①:一本杖(T字杖・L字杖)
最も一般的で、街中でもよく見かけるタイプです。グリップ(握り手)がT字やL字の形状をしています。
軽くて扱いやすく、デザインやカラーバリエーションが豊富なのも特徴。折りたたみ式や伸縮式など、持ち運びに便利な機能を持つものも多くあります。
自力でしっかり歩けるものの、軽いふらつきがある方や、長距離を歩くときに疲れやすい方の「歩行の補助」に適しています。
杖の種類②:多点杖(3点・4点杖)
杖の先が3つや4つの脚に分かれており、床に接する面積が広いタイプです。
接地面が広く、杖自体が自立するため、手を離しても倒れません。一本杖よりも安定感が非常に高く、体重をしっかりと預けることができます。
一方、傾斜や段差ではすべての脚が接地しにくく、かえって扱いづらい場合があります。
筋力の低下を感じている方、脳卒中の後遺症などによる麻痺がある方、リハビリ中の方などに使用されることがありますが、体の状態によって適切な形や使い方が異なります。自己判断で選ばず、医師や理学療法士などに相談しましょう。
杖の種類③:ロフストランドクラッチ
握り手の上部に、前腕を固定するための「カフ」と呼ばれる輪がついているタイプです。
握力だけでなく、腕全体で体重を支えることができるため、手首や指への負担が少ないのが特徴です。
足のけがや病気などで片足に体重をかけられない方などで使用されることがありますが、どの程度足に体重をかけてよいかによって、必要な補助具が変わります。骨折後やリハビリ中の方は、医師や理学療法士の指示に従ってください。
杖の選び方で確認したい3つのポイント

杖を初めて購入する際は、どのようなものを選べばよいのか迷ってしまいますよね。
ここでは、押さえておきたい選び方のポイントをご紹介します。
杖の選び方のポイント①:体の状態に合わせて選ぶ
杖にはいくつかの種類があり、身体の状態や使用する目的によって適したものが異なります。
一般的には、次のような使い分けがあります。
●基本は自分で歩けるがふらつきや歩行による疲れが心配な方…一本杖(T字杖・L字杖)
●足腰の弱りが顕著な方や脳卒中の麻痺などがある方…多点杖(3点・4点杖)
●握力が低下している方や足に負担をかけられない方…ロフストランドクラッチ
ただし、これはあくまで一般的な目安です。急に歩きにくくなった方、麻痺がある方、骨折後の方、何度も転倒している方は、杖を購入する前に医療機関へ相談しましょう。
杖の選び方のポイント②:身長に合った長さのものを選ぶ
長さが合っていない杖を使い続けると、かえって姿勢が悪くなったり、腰や肩を痛めたりする原因になってしまいます。長さもしっかり確認したうえで購入することが大切です。
一本杖の長さを考える際の一般的な目安の一つに、次の計算方法があります。
適切な杖の長さ = 身長÷2+2~3cm
※例えば身長160cmの場合は、82〜83cm程度が一つの目安です。
そのほか、普段履く靴を履き、自然に立った状態で杖を持ったときに肘が30°の角度になる位置を長さの基準とすることもあります。
ただ、これらはあくまで目安です。
腰や背中の曲がり方や靴の高さ、筋力などによっても適切な長さは変わってきます。計算結果だけで決めず、実際に立って握った状態で確認しましょう。
杖の選び方のポイント③:グリップと杖先も確認する
杖を使う際に握る部分がグリップです。
グリップには木製、樹脂製、柔らかい素材を使ったものなどがあります。
●木製
広く使われている素材です。軽量ですが傷がつきやすい欠点もあります。
●アクリル樹脂
強度があり、劣化しにくいのが特徴です。
●ソフト樹脂
滑りにくく、手にかかる圧力を緩和します。
素材だけでなく、実際に握ったときに次の点を確認しましょう。
- 手の大きさに合っているか
- 指や手のひらに痛みが出ないか
- 滑りにくいか
- 手首に無理な力がかからないか
- 左右どちらの手で使う形状か
杖先に付いているゴムも重要です。すり減って溝がなくなった杖先ゴムは滑りやすくなるため、定期的に確認し、必要に応じて交換しましょう。
急なふらつきや歩きにくさがある場合は、杖を選ぶ前に相談を
歩きにくさを感じたとき、杖を使うことで安心して歩ける場合があります。
ただし、急にふらつくようになった、これまでと歩き方が変わった、片方の手足に力が入りにくいといった場合は、杖だけで対応しようとせず、先に医療機関へ相談してください。
また、転倒を繰り返している方や、骨折・手術後、脳卒中などの後遺症がある方は、身体の状態に合った歩行補助具を選ぶ必要があります。自己判断で杖を購入せず、医師や理学療法士などに確認しましょう。
杖は、歩行の不安を支えるための道具です。まずは歩きにくさの状況を確認したうえで、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
杖の選び方に迷ったら、専門家に相談しましょう
杖には、一本杖、多点杖、ロフストランドクラッチなど、さまざまな種類があります。
どの杖が適しているかは、筋力や歩き方、痛みのある場所、屋内・屋外のどちらで使うかなどによって異なります。長さだけでなく、杖を持つ手や歩くときの使い方も重要です。
自分に合う杖がわからない場合は、福祉用具専門相談員や理学療法士など、杖や歩行補助具に詳しい専門家へ相談しましょう。
介護保険を利用している方は、担当のケアマネジャーに相談すると、身体の状態や生活環境に合った福祉用具の相談先を案内してもらえます。
介護保険を利用していない方や、相談先がわからない方は、お住まいの地域の地域包括支援センターへ相談する方法もあります。
実際に杖を選ぶ際は、可能であれば普段履いている靴で試し、握りやすさや長さ、歩いたときの安定感を確認しましょう。
杖選びの相談先がわからないときは、薬局にお声がけください
多くの薬局では、歩き方を評価したり、身体の状態に合わせて杖を専門的に選定したりすることまでは行っていません。
一方で、薬局は、日頃からお薬を通して体調や日常生活の様子を伺っている場所です。
「杖が必要かもしれないけれど、どこに相談すればよいかわからない」「福祉用具の専門家に相談したいが、窓口がわからない」といった場合には、薬局でお話を伺い、地域の相談窓口や専門職をご案内できることがあります。
また、服用している薬の中には、眠気、めまい、立ちくらみなどが起こり、歩行に影響するものもあります。
「薬を飲み始めてからふらつくようになった」「薬が変わってから足元が不安定な気がする」といった場合は、ご自身の判断で薬を中止せず、薬剤師にご相談ください。
薬局は、杖を選ぶ専門店ではありませんが、歩行への不安を伺い、必要に応じて適切な専門家や相談先につなぐことができます。
ご本人だけでなく、「親の歩き方が少し心配になってきた」というご家族からのご相談も可能です。
杖選びや服用中のお薬について、どこに相談すればよいかわからないときは、お近くの健栄の薬局で薬剤師にお声がけください。
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<参考文献>
ファーマシーきみさらず
薬剤師
竹田