足腰が弱くなってきた、退院後の生活が不安。
そんな方が生活を送る際の負担を軽くしてくれるのが「車椅子」。「あれば便利だけど、購入するのは大変そう」とお悩みなら、レンタルを検討してみてはいかがでしょうか。
実は、車椅子は一定の条件を満たせば、介護保険を利用して費用を抑えてレンタルできます。
薬剤師は、普段からお薬を通して、歩きにくさやふらつき、通院の負担、ご家族による介助など、日常生活についてお話を伺っています。
今回は、健栄の薬局「健栄鏑木薬局」の薬剤師が、生活に寄り添う薬剤師の視点から、介護保険を使った車椅子レンタルの仕組みや料金、手続きの流れ、相談先について分かりやすく解説します。
車椅子は介護保険でレンタルできる!必要な条件とは

車椅子は介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」というサービスを利用して借りることができます。
ただし、要介護認定を受けていれば、誰でも一律にレンタルできるわけではありません。要介護度や身体の状態、生活環境などによって、介護保険の対象となるかが判断されます。
車椅子を介護保険でレンタルできる条件①:要介護認定を受けている
介護保険を使って車椅子をレンタルするには、まず市区町村から「要介護認定」を受けている必要があります。
車椅子の福祉用具貸与は、原則として要介護2〜5の方が対象です。
介護保険が適用される場合は、利用者の所得に応じて、レンタル料金の1~3割を自己負担します。
一方、要支援1・2、要介護1の方は、原則として車椅子の福祉用具貸与の対象外です。
ただし、認定調査の結果や医師から得た情報、サービス担当者会議での検討などにより、日常生活における移動の支援が特に必要と判断された場合には、例外的に介護保険の対象となることがあります。
医師の判断だけで決まるものではなく、ケアマネジャーなどが本人の状態や生活環境を確認し、市区町村の確認を受けるなど、所定の手続きが必要です。
判断方法は自治体によって異なることがあるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談しましょう。
車椅子を介護保険でレンタルできる条件②:ケアプランに位置付けられている
車椅子のレンタルに介護保険を利用するには、担当のケアマネジャーが作成する「ケアプラン」に、車椅子の利用を位置づける必要があります。
ケアマネジャーは、本人の身体状況や移動の様子、ご家族による介助の状況、住まいの環境などを確認し、車椅子が必要かどうかを検討します。
まだ担当のケアマネジャーがいない場合や、要介護認定を受けていない場合は、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターへ相談してください。
介護保険を使った車椅子のレンタル料金

前述したように、介護保険を利用して福祉用具をレンタルする場合、利用者の所得に応じて、1~3割の自己負担で利用できます。
以下は、車椅子の種類ごとのレンタル料金と、介護保険適用時の自己負担額の目安です。
車椅子の種類①:標準的な車椅子
通常のレンタル月額料金(全額):約3,000~5,000円
介護保険適用時の自己負担額(1割の場合):300~500円
車椅子の種類②:自走式・介助式
通常のレンタル月額料金(全額):約5,000~8,000円
介護保険適用時の自己負担額(1割の場合):500~800円
車椅子の種類③:電動車椅子
通常のレンタル月額料金(全額):約10,000円~40,000円
介護保険適用時の自己負担額(1割の場合):1,000~4,000円
このように、保険が適用されれば月々数百円から千円台という経済的な負担額で、質の高い車椅子を使用することができます。
ただし、実際のレンタル料金は、車椅子の製品や機能、付属品、貸与事業者などによって異なります。
車椅子には、自分で車輪を動かす「自走式」、介助する方が後ろから押す「介助式」、姿勢を調整できる「リクライニング式」、電動で移動できる「電動車椅子」など、さまざまな種類があります。
機能が多い車椅子ほど貸与価格が高くなる傾向がありますが、介護保険が適用されれば、その貸与価格の1~3割が原則として自己負担となります。
なお、介護保険サービスには、要介護度に応じた1か月あたりの支給限度額があります。
訪問介護や通所介護など、ほかの介護サービスとの合計が支給限度額を超えた場合、超えた部分は全額自己負担となるため、具体的な費用についてはケアマネジャーや福祉用具貸与事業者へ確認しましょう。
参考:厚生労働省「福祉用具・住宅改修」「福祉用具の全国平均貸与価格及び貸与価格の上限」
車椅子をレンタルするメリット
「あまり使わないかもしれないから、購入するか迷っている」という方にとって、必要な期間だけ利用できることは、レンタルの大きなメリットです。
また、レンタル期間中に身体の状態が変わった場合には、状況に応じて別のタイプの車椅子を検討できます。
たとえば、
- 長時間座っていることが難しくなった
- 姿勢を保つための機能が必要になった
- 室内で小回りの利く車椅子が必要になった
- ご家族による移動介助の負担が大きくなった
- 自宅周辺の坂道や段差に対応できる車椅子が必要になった
といった変化があれば、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ相談できます。
契約内容によっては、定期的な点検や調整を受けられることも、レンタルのメリットです。
車椅子は、利用する方の身体の状態だけでなく、使用する場所や介助する方の状況に合わせて選ぶことが大切です。
介護保険で車椅子をレンタルする流れ

実際に介護保険を使って車椅子をレンタルする際は、以下のようなステップで手続きが進みます。
介護保険を使った車椅子レンタルの流れ①:ケアマネジャー(または地域包括支援センター)に相談する
まずは担当のケアマネジャーに「車椅子をレンタルしたい」と伝えます。まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターで申請を行います。
「車椅子を借りたい」と決まっていなくても、
- 最近、歩くのがつらそう
- 通院や外出が負担になっている
- 退院後の移動が心配
- ご家族だけで介助するのが難しい
といった困りごとを、そのまま相談して構いません。
まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターで、申請について相談します。
介護保険を使った車椅子レンタルの流れ②:ケアプランの作成と確認
ケアマネジャーが、本人の身体状況や生活環境、介助する方の状況などを確認します。
車椅子が必要と判断された場合は、車椅子レンタルを組み込んだ「ケアプラン(介護サービス計画書)」を作成します。
車椅子を使う目的も大切です。
「通院のときだけ使いたい」「自宅内の移動に使いたい」「外出の機会を増やしたい」など、どのような場面で困っているのかを具体的に伝えましょう。
介護保険を使った車椅子レンタルの流れ③:レンタル事業者を選ぶ
ケアプランが作成されたら、指定を受けたレンタル事業者の中から車椅子を借りる事業者を選びます。
福祉用具貸与事業者には、「福祉用具専門相談員」という専門職がいます。
福祉用具専門相談員が、利用する方の身体状況や住まいの環境、使用目的、ご家族の介助方法などを確認し、適した車椅子を提案します。
どの事業者を選ぶべきか、どのような車椅子がよいのか迷ったときはケアマネジャーに相談するとよいでしょう。
介護保険を使った車椅子レンタルの流れ④:試着・契約・納品
実際に車椅子を自宅へ搬入し、サイズや操作性を試します。
車椅子を選ぶときには、次のような点も確認しておきましょう。
- 本人の体格や姿勢に合っているか
- 足が足台に無理なく乗っているか
- 座っているときに身体が傾かないか
- 玄関や廊下、室内の扉を通れるか
- ご家族が無理なく操作できるか
- 車への積み込みが必要か
- ブレーキや折りたたみ操作がしやすいか
問題がなければ契約を結び、車椅子が納品、正式にレンタルがスタートします。
納品時には、ブレーキのかけ方や足台の操作、折りたたみ方、段差を越える際の注意点など、正しい使用方法について説明を受けましょう。
介護保険を使った車椅子レンタルの流れ⑤:利用後も定期的に確認する
車椅子は、一度選べば終わりではありません。
身体の状態や生活環境が変わると、それまで使っていた車椅子が合わなくなることがあります。
- 座っていると痛みが出る
- 身体が前や横にずれる
- 足が足台から落ちる
- 車椅子から立ち上がりにくい
- 介助する方が操作しにくい
- ブレーキや車輪の調子が悪い
といった変化があれば、無理に使い続けず、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員へ相談してください。
歩きにくさやふらつきは、薬が関係していることも
歩きにくさや転倒の背景には、加齢による筋力の低下や病気の影響だけでなく、服用している薬が関係している場合もあります。
たとえば、薬の種類によっては、
- 眠気が出る
- 立ち上がったときにふらつく
- 血圧が下がる
- 足元が不安定になる
- 注意力が低下する
といった症状が現れることがあります。
ただし、薬が原因かどうかを自分で判断することはできません。
気になる症状があっても、自己判断で薬の量を減らしたり、服用を中止したりせず、医師や薬剤師へ相談してください。
薬剤師は、服用している薬や症状が現れた時期、普段の血圧、転倒した状況などを確認し、必要に応じて医師への相談をご案内します。
薬局薬剤師から体調管理と福祉用具のアドバイス
車椅子は単なる移動手段ではなく、通院や外出、ご家族との時間を支え、その人らしい生活を続けるための大切な福祉用具です。 活動範囲が広がることで、生活にメリハリが生まれ、認知機能の維持や気分のリフレッシュにもつながります。
一方で、「最近歩くのがつらそう」「退院後の移動が心配」「車椅子が必要かもしれないけれど、どこに相談したらよいか分からない」と感じても、ご本人やご家族だけでは判断が難しいことがあります。
薬剤師は、処方箋によるお薬の調剤だけでなく、日頃から服薬状況や体調の変化、歩行や立ち上がりの様子、通院の負担、ご家族による介助など、日常生活についてお話を伺っています。
たとえば、
- 薬を飲み始めてから眠気やふらつきが出ている
- 立ち上がるとめまいがする
- 転倒することが増えた
- 通院や外出が負担になってきた
- ご家族だけでの移動介助が難しくなっている
- 介護サービスを利用したいが、相談先が分からない
といったお困りごとがありましたら、薬剤師へお話しください。
薬の影響が考えられる場合は、服薬状況を確認したうえで医師への相談をご案内します。
車椅子や介護サービスに関する支援が必要な場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センター、福祉用具専門相談員など、相談内容に合った専門職や窓口につなぎます。
薬局だけですべてを解決するのではなく、まず相談を受け、お困りごとを一緒に整理し、必要な支援につなぐことも薬剤師の役割です。
「こんなことを薬局で相談してもよいのかな」と迷うようなことでも構いません。
お薬や体調、介護、日常生活について気になることがありましたら、お近くの健栄の薬局、薬剤師へお気軽にお声がけください。
この記事を担当した店舗

<参考文献>
- 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」
- 厚生労働省「要支援・要介護1の者に対する福祉用具貸与について」
- 厚生労働省「介護保険制度における福祉用具貸与の対象種目」
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム|福祉用具貸与」
- 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料|介護保険の解説
- 厚生労働省「全国平均貸与価格及び貸与価格の上限」
健栄 鏑木薬局
薬剤師
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