春から秋にかけては、キャンプやハイキング、家庭菜園など、屋外で過ごす機会が増える時期です。そんなときに気をつけたいのが「マダニ」です。
マダニと聞くと、山の奥にいる虫というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、山林だけでなく、草むらや河川敷、公園など、私たちの身近な場所に生息していることもあります。
また、マダニに刺されても痛みやかゆみを感じにくく、しばらく気づかない場合もあります。
では、マダニに刺されないためには、どのような準備をすればよいのでしょうか。また、皮膚についているマダニを見つけたときは、どう対処すればよいのでしょう。
今回は、屋外活動で取り入れたいマダニの予防策と、見つけたときの対処法について、健栄の薬局「みずき薬局 成田店」の薬剤師がお伝えします。
マダニとは?

マダニは、山林や草むら、公園、河川敷などの屋外に生息する比較的大型のダニの一種です。
衣類や寝具に生息するヒョウヒダニなど、一般に「家の中のダニ」と呼ばれるものとは種類が異なります。成長したマダニは吸血前でも数ミリほどあり、吸血するとさらに大きくなることがあります。
人や動物の皮膚に付着すると、口器を深く差し込み、数日間にわたって吸血することがあります。
マダニのなかには、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱などの原因となる病原体を持っているものもいます。
ただし、すべてのマダニが病原体を持っているわけではありません。必要以上に怖がるのではなく、まずは「刺されないための対策」と「皮膚についているのを見つけても、無理に引き抜かないこと」を覚えておきましょう。
マダニはどこにいる?
マダニは、草むらや藪、山林などに生息しています。
登山やキャンプなど本格的なアウトドアだけでなく、次のような身近な場面でも注意が必要です。
- 河川敷を歩く
- 公園の草地で遊ぶ
- 家庭菜園や畑仕事をする
- 草刈りをする
- 犬の散歩で草むらに入る
- 山菜採りや墓地の清掃をする
マダニは蚊のように飛んでくるわけではありません。草や葉の先などで待ち、人や動物が触れたときに体や衣類へ移ります。
「山に行かないから大丈夫」とは限らないのが、少し厄介なところです。
マダニに刺されないための予防策

肌の露出を減らす
マダニ対策の基本は、肌の露出をできるだけ減らすことです。
アウトドアや農作業、犬の散歩などで草むらに入る際は長袖・長ズボンを着用し、足元まで覆える靴を選びましょう。
さらに、次のような工夫も役立ちます。
- シャツの裾をズボンの中に入れる
- ズボンの裾を靴下や長靴の中に入れる
- 首にはタオルを巻く
- 帽子や手袋を着用する
- サンダルを避ける
- 白やベージュなど、マダニを見つけやすい明るい色の服を選ぶ
厚生労働省も、肌の露出を少なくし、マダニを確認しやすい明るい色の服を勧めています。暑い季節に長袖・長ズボンは少しつらいかもしれません。通気性のよい素材を選び、こまめな水分補給や休憩も忘れないようにしましょう。
虫よけ剤は「マダニに使えるか」を確認
虫よけ剤なら、どの商品でも同じというわけではありません。
市販の虫よけには、ディートやイカリジンを有効成分として含み、マダニへの効果が表示されている製品があります。購入するときは、パッケージの「効能・効果」や対象害虫の欄に「マダニ」と記載されているか確認しましょう。
虫よけ剤は、有効成分や濃度、製品によって、次のような使用条件が異なります。
- 使用できる年齢
- 1日に使用できる回数
- 肌に使用できるか
- 衣類にも使用できるか
- 顔に使用するときの方法
特にディート配合製品には、製品や濃度によって、年齢制限や使用回数に制限が設けられているものがあります。必ず使用する製品の表示を確認し、用法・用量を守って使用してください。
なお、虫よけ剤を使っていても、マダニの付着を完全に防げるわけではありません。長袖や長ズボンなどの服装と組み合わせることが必要です。
草むらでは座る場所にもひと工夫
草が生い茂った場所に直接座ったり、遊歩道を外れて藪の中へ入ったりすると、マダニと接触する機会が増えます。
屋外では、次のような行動も意識してみましょう。
- 草が生い茂っている場所に長時間座らない
- 遊歩道から外れて藪の中に入らない
- レジャーシートを活用し、直接地面に座らない
- キャンプや登山の際は周囲の草木にも注意する
また、荷物にもマダニがつく可能性があります。帰宅したら、衣類だけでなく、リュックやレジャーシートなども確認しておくと安心です。
帰宅後は衣類や体をチェック。ペットのケアも忘れない
マダニは刺されても痛みやかゆみが少なく、すぐには気づかない場合があります。
屋外から帰宅した後は、衣類や持ち物にマダニがついていないか確認しましょう。できれば上着や作業着は玄関先などで脱ぎ、室内へ持ち込んだまま長時間放置しないようにします。
そして、早めに入浴やシャワーを済ませ、体にマダニがついていないか確認することも大切です。
特に次の部位はチェックするようにしましょう。
- 首まわり
- わきの下
- 手首
- 胸の下
- 足の付け根
- ひざの裏
- 耳の後ろ
- 髪の中や生え際
小さなお子さんは、自分では確認しにくいため、大人が髪の中や耳の後ろまで見てあげてください。
犬や猫などのペットも、散歩中にマダニが付着することがあります。帰宅後はブラッシングをしながら体の状態を確認してください。
ペットの皮膚に食いついているマダニを見つけた場合も、無理に引き抜かず、動物病院へ相談してください。予防のためのダニ駆除剤についても、獣医師に相談しましょう。
皮膚についているマダニを見つけたら、自分では取らず医療機関へ

皮膚に黒いほくろのようなものがあり、よく見ると脚がついている。そのようなものを見つけたら、慌てて自分で取り除こうとしてしまうかもしれません。
しかし、吸血中のマダニは、皮膚に口器を深く差し込んでいます。
自己流の対処で無理に引き抜くと、マダニの口器の一部が皮膚内に残ったり、マダニの体を圧迫して体液を逆流させたりするおそれがあります。
万が一マダニが付着しているのを見つけても、自分で取り除こうとしないでください。特に、次のような自己流の対処は絶対に行わないでください。
- 指や爪でつまむ
- ピンセットなどで無理に引き抜く
- マダニの体を押したり、つぶしたりする
- 火や薬品などで刺激して外そうとする
- インターネットなどで紹介されている方法を自己判断で試す
できるだけ触らず、そのままの状態で皮膚科などの医療機関を受診しましょう。
「痛くないから大丈夫」と放置しない
マダニに刺されても、痛みやかゆみをほとんど感じない場合があります。
「症状がないから問題ないだろう」と放置せず、皮膚についているマダニを見つけた場合は、医療機関を受診してください。
マダニは数日間、長いものでは10日間以上吸血を続けることがあります。時間が経つほど皮膚にしっかりと付着し、除去が難しくなる場合もあります。
除去したあとも数週間は体調を確認
マダニを除去したら、それで終わりとは限りません。マダニに刺された後は、数週間程度、体調の変化に注意しましょう。
マダニが媒介する感染症は、種類によって症状や発症までの期間が異なります。次のような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 発熱
- 強いだるさ
- 食欲不振
- 吐き気や嘔吐
- 下痢や腹痛
- 頭痛や筋肉痛
- 刺された部分の赤みや腫れが広がる
例えばSFTSでは、マダニに刺されてから6日~2週間程度で発熱や全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などが現れることがあります。
ただし、症状や発症時期には個人差があり、ほかのマダニ媒介感染症では異なる症状が現れる場合もあります。自己判断で様子を見続けず、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
受診するときは、次のような情報を医師へ伝えてください。
- いつごろ草むらや山林へ入ったか
- マダニに刺された、または付着していたこと
- いつ、どこでマダニを見つけたか
- どのような症状が、いつから現れたか
マダニがすでに取れている場合でも、刺された場所や皮膚の変化を、日付が分かるように写真でのこしておくと、経過を伝える参考になります。
虫よけ剤選びは薬剤師へ、付着や体調変化は医療機関へ
マダニが皮膚に食いついている場合、薬局で除去することはできません。無理に取らず、皮膚科などの医療機関を受診してください。
また、マダニに刺された後に発熱や強いだるさ、消化器症状、発疹などが現れた場合も、薬局で市販薬を選ぶ前に医療機関を受診しましょう。
一方で、刺される前の準備については、薬局でもお手伝いできます。
例えば、次のようなご相談です。
- 子どもに使える虫よけ剤を選びたい
- マダニにも対応した商品を知りたい
- 肌が敏感で、虫よけ剤の選び方や使用上の注意点を確認したい
- 以前購入した虫よけ剤について確認したい
- 虫よけ剤と日焼け止めの使い方を相談したい
使用する方の年齢や、行き先、屋外で過ごす時間などが分かると、商品を選びやすくなります。すでに持っている商品について確認したいときは、現物やパッケージの写真をお持ちください。
マダニ対策は、特別なアウトドアに出かける人だけのものではありません。
公園へのお出かけや犬の散歩、草取りなど、いつもの生活の中でも、服装と虫よけ剤、帰宅後のチェックを少し意識してみてください。虫よけ剤選びなどで迷ったときは、お近くの健栄の薬局へお気軽にご相談ください。
<参考文献>
みずき薬局 成田店
薬剤師